概要
神経認知障害群(Neurocognitive Disorders)は、認知機能(記憶、思考、判断など)の低下を主要な特徴とする障害群です。DSM-5では、従来の「認知症」「せん妄」などがこのカテゴリーに統合されました。
重要な理解
認知機能の低下は、正常な加齢とは異なります。日常生活に支障をきたすような認知機能の低下は、医学的評価が必要です。早期発見・早期介入により、進行を遅らせたり、QOLを改善したりすることができます。
主な障害
- せん妄(Delirium):急性の意識障害、可逆的
- 軽度神経認知障害(Mild NCD):軽度の認知機能低下、日常生活はおおむね自立
- 重度神経認知障害(Major NCD):著しい認知機能低下、日常生活に介助が必要(従来の「認知症」に相当)
認知機能の領域
DSM-5では、以下の6つの認知領域を定義しています:
- 複雑性注意:注意の持続、分割、選択
- 実行機能:計画、意思決定、作業記憶、柔軟性、抑制制御
- 学習と記憶:即時記憶、近時記憶、遠隔記憶、再認
- 言語:表出性言語、受容性言語、文法、流暢性
- 知覚-運動:視覚-構成、視覚-知覚、プラクシス(運動の遂行)
- 社会的認知:感情認識、心の理論
主な原因疾患
- アルツハイマー病:最も多い(約60〜70%)
- 血管性:脳梗塞、脳出血など(約15〜20%)
- レビー小体型:約10〜15%
- 前頭側頭型:約5〜10%
- その他:パーキンソン病、ハンチントン病、HIV、頭部外傷、プリオン病、物質・薬物など
- 混合型:複数の原因の組み合わせ
疫学
- 認知症(重度NCD):65歳以上の約15%、85歳以上の約40%
- 日本の認知症患者数:約600万人(2020年)、2025年には約700万人と予測
- MCI(軽度NCD):65歳以上の約15〜20%
- 高齢化とともに増加:最大の危険因子は加齢
社会的影響
認知症は、本人だけでなく、家族、社会全体に大きな影響を与えます。介護負担、医療・介護費用の増大、認知症の人の権利擁護など、多くの課題があります。「認知症になっても安心して暮らせる社会」の実現が求められています。
概要
せん妄(Delirium)は、急性に発症する意識障害で、注意、意識、認知の障害を特徴とします。通常、可逆的であり、原因を治療すれば改善します。
DSM-5 診断基準
A. 注意と意識の障害
- 注意を方向づけ、集中し、維持し、転換する能力の低下
- 環境への気づき(意識)の低下
B. 短期間での発症と変動
- 短時間(通常数時間〜数日)で発症
- 注意や意識のベースラインレベルからの変化
- 1日の中で重症度が変動する傾向
C. 追加の認知障害
- 記憶欠損、見当識障害、言語、視空間能力、知覚のうち少なくとも1つ
D. A、Cの障害は既存の認知障害では説明されない
E. 医学的状態、物質中毒・離脱、毒物への曝露の直接的な生理学的結果
臨床的特徴
意識レベルの変動
- 覚醒度の低下(傾眠、昏睡)
- または過覚醒(興奮、不穏)
- 1日の中で変動(夜間に悪化することが多い=夜間せん妄)
認知機能の障害
- 注意障害:話に集中できない、すぐに気が散る
- 見当識障害:時間、場所、人物がわからない
- 記憶障害:特に近時記憶
- 思考の障害:まとまりのない思考、会話
知覚の障害
- 錯覚:誤った知覚(カーテンを人と見間違えるなど)
- 幻覚:主に視覚的幻覚(虫、小動物など)
精神運動の変化
- 過活動型:興奮、不穏、易怒性、多動
- 低活動型:傾眠、無気力、反応低下
- 混合型:両方の特徴
原因
直接的原因
- 中枢神経系疾患:脳卒中、脳炎、髄膜炎、頭部外傷、てんかん
- 全身性疾患:感染症、発熱、脱水、電解質異常、肝不全、腎不全、低酸素
- 物質:薬物中毒(抗コリン薬、ベンゾジアゼピン、オピオイドなど)、アルコール・薬物離脱
- 代謝異常:低血糖、高血糖、甲状腺機能異常
危険因子
- 高齢
- 認知症の既往
- 重症疾患
- 多剤併用
- 感覚障害(視覚・聴覚)
- 入院(特にICU)
- 手術後
せん妄と認知症の鑑別
| 特徴 |
せん妄 |
認知症 |
| 発症 |
急性(数時間〜数日) |
緩徐(月〜年単位) |
| 経過 |
変動性、可逆的 |
進行性、不可逆的 |
| 意識レベル |
変動、しばしば低下 |
通常正常(後期まで) |
| 注意 |
著しく障害 |
後期まで比較的保たれる |
| 幻覚 |
頻繁(視覚的) |
レビー小体型以外では少ない |
| 日内変動 |
著明(夜間悪化) |
軽度 |
治療
原因の治療
- 感染症の治療
- 電解質異常の補正
- 原因薬物の中止・変更
- 低酸素の改善
非薬物的介入
- 環境調整:静かで明るい環境、時計・カレンダーの設置
- 見当識訓練:繰り返し日時・場所を伝える
- 感覚補助:眼鏡、補聴器の使用
- 睡眠-覚醒リズム:日中の活動、夜間の睡眠確保
- 早期離床・リハビリ
- 家族の付き添い
薬物療法(必要最小限に)
- 抗精神病薬:ハロペリドール、リスペリドン(興奮、幻覚に対して)
- 注意:ベンゾジアゼピンは悪化させることがあり、原則使用しない(アルコール離脱せん妄は除く)
概要
軽度神経認知障害(Mild Neurocognitive Disorder)、一般的にはMCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)と呼ばれる状態は、正常な加齢と認知症の中間段階です。
DSM-5 診断基準(軽度神経認知障害)
A. 認知機能の低下
以前の遂行レベルから、1つ以上の認知領域(複雑性注意、実行機能、学習と記憶、言語、知覚-運動、社会的認知)において、軽度の認知の低下があるという証拠:
- 本人、知っている情報提供者、または臨床家による、軽度の認知機能の低下についての懸念
- 標準化された神経心理学的検査、または定量化された臨床的評価によって文書化される、軽度の認知遂行の障害
B. 日常生活動作への影響
認知欠損は、日常生活動作の自立を妨げない(すなわち、請求書の支払いや服薬管理などの複雑な手段的日常生活動作は保たれているが、以前よりも努力を要したり、代償的方略を用いたり、配慮が必要となったりする)。
C. せん妄ではない
D. 他の精神疾患ではない
特徴
- もの忘れ:同年代より目立つが、日常生活に大きな支障はない
- 自覚:本人が気づいていることが多い
- 代償:メモ、リマインダーなどで補える
- ADL:基本的な日常生活動作は自立
- IADL:複雑な家事などはやや困難になるが、なんとかできる
MCIのタイプ
- 健忘型MCI:記憶障害が主、アルツハイマー病への移行リスク高
- 非健忘型MCI:記憶以外(言語、実行機能など)が主、前頭側頭型認知症などへ
MCIの経過
MCIと診断された人の経過は様々です:
- 認知症へ進行:年間約10〜15%(5年で約50%)
- 安定:変化なく維持
- 改善:正常に戻る(約10〜20%)
重要性
- 早期介入の機会:進行予防の取り組みが可能
- 準備の時間:将来の計画を立てられる
- リスク管理:危険因子の修正
MCIへの対応
危険因子の管理
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症の管理
- 禁煙
- 適正体重の維持
認知刺激
- 知的活動(読書、パズル、楽器演奏など)
- 社会的交流
- 新しいことへの挑戦
身体活動
- 有酸素運動(ウォーキング、水泳など)
- 週3〜5回、30分以上
地中海式食事
- 野菜、果物、魚、オリーブオイル、ナッツ
- 赤肉、加工食品を控える
概要
アルツハイマー型認知症(Alzheimer's Disease: AD)は、認知症の最も一般的な原因で、進行性の神経変性疾患です。
病理
- 老人斑:アミロイドβタンパクの沈着
- 神経原線維変化:タウタンパクの異常蓄積
- 神経細胞の脱落:特に海馬、側頭葉、頭頂葉
- 脳の萎縮:進行とともに全般的に
症状の進行
初期(軽度):1〜3年
記憶障害:もの忘れ(特に近時記憶)、同じことを繰り返し聞く、約束を忘れる
見当識障害:日付がわからない
その他:意欲低下、趣味への興味減退
ADL:ほぼ自立、IADLで一部困難
中期(中等度):2〜10年
記憶障害:遠隔記憶も障害、家族の顔を忘れる
見当識障害:時間・場所がわからない、迷子になる
言語障害:言葉が出てこない、会話が困難
実行機能障害:計画、判断ができない
BPSD:徘徊、妄想、興奮、攻撃性
ADL:着替え、入浴に介助必要
後期(重度):1〜3年
全般的な認知機能低下:意思疎通困難、家族がわからない
運動機能低下:歩行困難、嚥下障害
ADL:全面的介助が必要、寝たきり
合併症:肺炎、褥瘡、尿路感染
BPSD(行動・心理症状)
認知症の中核症状(記憶障害など)に加えて、以下のような行動・心理症状が出現します:
心理症状
- 妄想:「物を盗まれた」(物盗られ妄想)、「配偶者が浮気している」
- 幻覚:「知らない人がいる」
- 抑うつ:気分の落ち込み、意欲低下
- 不安:落ち着きのなさ、心配
- 無関心・アパシー
行動症状
- 徘徊:目的なく歩き回る、外出して帰れない
- 興奮・攻撃性:怒りっぽい、暴言・暴力
- 不穏:落ち着かない、そわそわ
- 介護への抵抗:入浴、着替えを拒否
- 異食:食べ物でないものを口に入れる
- 不適切な性的行動
- 睡眠障害:昼夜逆転
危険因子
変更不可能な因子
- 加齢:最大の危険因子
- 遺伝:家族歴、特定の遺伝子(APOE ε4)
- ダウン症候群
変更可能な因子
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症
- 肥満
- 喫煙
- 過度の飲酒
- 頭部外傷
- うつ病
- 低教育、知的活動の低さ
- 社会的孤立
- 運動不足
- 聴力低下
概要
血管性認知症(Vascular Dementia: VaD)は、脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)により脳組織が障害され、認知機能が低下する状態です。
原因
- 多発脳梗塞:複数の小さな梗塞の蓄積
- 大血管性梗塞:大きな脳梗塞
- 小血管病変:ラクナ梗塞、白質病変
- 脳出血:皮質下出血など
- 低灌流:心不全、低血圧による慢性的な血流不足
特徴
発症様式
- 急性発症:脳卒中後に突然認知機能低下
- 階段状の悪化:脳卒中のたびに段階的に悪化
- 動揺性の経過:良い日と悪い日がある
認知機能障害のパターン
- まだら認知症:障害される領域と保たれる領域が混在
- 実行機能障害:計画、問題解決の困難が目立つ
- 注意・処理速度:集中力低下、動作が遅い
- 記憶障害:アルツハイマー型より軽度なことも
神経学的症状
- 片麻痺、構音障害
- 歩行障害(小刻み歩行、すくみ足)
- 偽性球麻痺(感情失禁)
- パーキンソニズム
- 尿失禁(早期から)
BPSDの特徴
- 抑うつが多い
- 感情失禁(些細なことで泣く、笑う)
- 人格は比較的保たれる
危険因子
- 高血圧:最も重要
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 心房細動
- 喫煙
- 肥満
- 運動不足
予防
血管性認知症は、危険因子の管理により予防可能な部分が大きいです:
- 血圧管理(目標:140/90 mmHg未満)
- 血糖管理
- 脂質管理
- 抗血小板薬・抗凝固薬(適応がある場合)
- 禁煙
- 適正体重
- 運動習慣
- 食事(減塩、地中海式食事)
概要
レビー小体型認知症(Dementia with Lewy Bodies: DLB)は、大脳皮質にレビー小体(異常なタンパク質の凝集体)が広範に出現することで生じる認知症です。
中核的特徴
1. 認知機能の変動
- 注意や覚醒レベルが著しく変動
- 「良い日」と「悪い日」の差が大きい
- 1日の中でも変動(数時間〜数日)
- ぼんやりしている、話がかみ合わない時がある
2. 繰り返される鮮明な幻視
- 人、動物、虫などの幻視
- 非常にリアルで詳細
- 「知らない人がいる」「子どもが遊んでいる」
- 初期から出現することが特徴
3. レム睡眠行動障害(RBD)
- 睡眠中に夢の内容を行動化
- 大声で叫ぶ、手足を激しく動かす
- 本人や同床者が怪我をすることも
- 認知症発症の数年前から出現することも
4. パーキンソニズム
- 動作が遅い(無動)
- 筋肉のこわばり(筋固縮)
- 小刻み歩行、前傾姿勢
- 転倒しやすい
- パーキンソン病との鑑別が重要
支持的特徴
- 抗精神病薬への過敏性(少量で重篤な副作用)
- 自律神経症状(起立性低血圧、便秘、発汗異常)
- 抑うつ
- 繰り返される転倒
- 失神様のエピソード
認知機能のパターン
- 注意・実行機能:早期から障害
- 視空間認知:著明な障害(迷子、時計描画の困難)
- 記憶:アルツハイマー型より軽度(手がかりで想起可能)
診断のポイント
- 進行性の認知機能低下
- 中核的特徴のうち2つ以上で「probable(可能性が高い)DLB」
- 中核的特徴1つ+支持的特徴1つ以上で「possible(可能性のある)DLB」
治療上の注意
抗精神病薬への過敏性
- 少量でも重篤な副作用(意識障害、筋固縮悪化、嚥下障害)
- 生命を脅かす可能性
- 使用は最小限、やむを得ない場合のみ
- クエチアピンが比較的安全とされる
コリンエステラーゼ阻害薬への良好な反応
- 幻視、認知機能変動、注意に効果
- アルツハイマー型より効果が高いことも
概要
前頭側頭型認知症(Frontotemporal Dementia: FTD)は、前頭葉・側頭葉の変性を主体とする認知症で、人格変化や言語障害を特徴とします。比較的若年(40〜60歳代)で発症することが多いです。
主なタイプ
7-1. 行動障害型FTD
中核症状
- 脱抑制:
- 社会的に不適切な行動(他人の物を勝手に取る、性的逸脱行動)
- 衝動的な行動
- 礼儀やマナーの欠如
- 無関心・無気力:
- 共感性・感情移入の欠如:
- 常同行動・強迫的行動:
- 食行動の変化:
- 過食
- 甘い物への嗜好
- 口唇傾向(何でも口に入れる)
認知機能
- 実行機能障害:計画、問題解決の困難
- 記憶:初期は比較的保たれる
- 視空間機能:保たれる
7-2. 意味性認知症(SD)
症状
- 語義失語:
- 言葉の意味がわからない
- 「これは何?」と繰り返し聞く
- 物の名前が言えない
- 表層性読字・書字障害:
- 物品認知障害:
- 人物同定困難:
7-3. 進行性非流暢性失語(PNFA)
症状
- 流暢性の低下:
- 構音障害:
- 失文法:
- 理解:比較的保たれる
FTDの特徴
- 若年発症:40〜60歳代が多い
- 緩徐進行性
- 遺伝性:約30〜50%に家族歴
- 人格変化が先行:記憶は初期は保たれる
- 病識欠如:本人は困っていないことが多い
鑑別診断
若年発症で人格変化が目立つため、以下と鑑別が必要:
- 精神疾患(うつ病、双極性障害、統合失調症)
- アルコール依存症
- 若年性アルツハイマー病
治療
- 薬物療法:有効な薬剤は現在なし
- 対症療法:SSRI(脱抑制、常同行動に)
- 環境調整:構造化された環境、ルーチンの維持
- 家族支援:疾患教育、介護負担への対応
8-1. 診断
病歴聴取
- 認知機能低下の経過(発症時期、進行速度)
- 具体的な症状(もの忘れ、迷子、性格変化など)
- 日常生活への影響(ADL、IADL)
- 併存疾患、服薬歴
- 家族歴
神経心理検査
- MMSE(Mini-Mental State Examination):30点満点、24点以下で認知症疑い
- HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール):30点満点、20点以下で認知症疑い
- MoCA(Montreal Cognitive Assessment):MCIの検出に有用
- 詳細な神経心理検査:各認知領域の詳細な評価
画像検査
- CT・MRI:
- 脳萎縮のパターン
- 脳血管障害の有無
- 腫瘍、水頭症など他疾患の除外
- SPECT・PET:
- 脳血流・代謝の低下部位
- アルツハイマー病:側頭葉・頭頂葉
- レビー小体型:後頭葉も
- 前頭側頭型:前頭葉・側頭葉
- アミロイドPET:アルツハイマー病の病理診断
- MIBG心筋シンチグラフィ:レビー小体型の診断補助
血液検査
- 可逆的認知症の除外(甲状腺機能、ビタミンB12、葉酸、梅毒など)
8-2. 治療
薬物療法
コリンエステラーゼ阻害薬(アルツハイマー型、レビー小体型):
- ドネペジル(アリセプト):軽度〜高度まで
- ガランタミン(レミニール):軽度〜中等度
- リバスチグミン(イクセロン、リバスタッチ):軽度〜中等度、貼付薬
- 効果:進行を遅らせる、症状を一時的に改善(根治ではない)
- 副作用:悪心、嘔吐、下痢、食欲不振、徐脈
NMDA受容体拮抗薬(アルツハイマー型):
- メマンチン(メマリー):中等度〜高度
- 効果:進行抑制、興奮・攻撃性の軽減
- 副作用:めまい、頭痛、便秘
BPSDへの薬物療法:
- 抗精神病薬:興奮、攻撃性、幻覚・妄想(最小限の使用、副作用に注意)
- 抗うつ薬(SSRI):抑うつ、不安
- 抗不安薬:不安、不眠(依存に注意、短期間のみ)
- 漢方薬:抑肝散など(BPSDに)
非薬物療法
認知刺激療法:
- 回想法(過去の思い出を語る)
- 音楽療法
- アートセラピー
- 園芸療法
リハビリテーション:
- 認知リハビリテーション
- 作業療法
- 理学療法(運動機能維持)
- 言語療法
環境調整:
- 安全な環境(転倒予防、迷子防止)
- 見当識への配慮(カレンダー、時計、目印)
- 馴染みのある環境
- 適度な刺激
認知症の人への接し方
基本的な心構え
- 尊厳を保つ:大人として、一人の人間として尊重する
- その人の世界に入る:否定せず、受け入れる
- 感情を大切に:事実より感情を重視
- できることに注目:できないことではなく、できることを
- ゆっくり、シンプルに
コミュニケーションのコツ
- 正面から、目を合わせて話す
- ゆっくり、はっきり、短い文で
- 一度に一つのことを
- 視覚的な手がかりを使う(指差し、実物を見せる)
- 選択肢は2つまで
- 繰り返しを嫌がらない
- 訂正しない、否定しない
- 話を合わせる(嘘をつくのではなく、その人の気持ちに寄り添う)
BPSDへの対応
徘徊:
- 原因を探る(トイレ、不安、目的地がある?)
- 無理に止めない、一緒に歩く
- GPS機器、身元確認票の活用
- 地域への協力依頼
物盗られ妄想:
- 否定しない、一緒に探す
- 「見つかって良かったですね」
- 大切な物は決まった場所に
- 本人を犯人扱いしない
興奮・攻撃性:
- 安全確保(本人と周囲)
- 刺激しない、落ち着いた態度
- 話題を変える、場所を変える
- 原因を探る(痛み、不快、恐怖?)
介護拒否:
- タイミングを変える
- 別の人が声をかける
- 理由を説明、納得してもらう
- 気分転換してから
家族介護者のケア
介護負担
認知症介護は、身体的・精神的・社会的・経済的に大きな負担となります:
- 24時間の見守り
- BPSDへの対応のストレス
- 自分の時間がない
- 社会的孤立
- 仕事との両立困難
- 経済的負担
- 将来への不安
介護者自身のケア
- 休息を取る:レスパイトケア(デイサービス、ショートステイ)の活用
- 一人で抱え込まない:家族、友人、専門家に相談
- 介護者の会:同じ立場の人との交流、情報交換
- 完璧を求めない:できる範囲で
- 自分の健康を守る:定期健診、休養
- 介護サービスの利用:遠慮せず、積極的に
利用できるサービス
介護保険サービス
- 在宅サービス:
- 訪問介護(ホームヘルプ)
- 訪問看護
- デイサービス(通所介護)
- デイケア(通所リハビリ)
- ショートステイ(短期入所)
- 施設サービス:
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 福祉用具:
地域のサポート
- 地域包括支援センター:総合相談窓口
- 認知症カフェ:当事者と家族の交流の場
- 認知症サポーター:地域での見守り
- 成年後見制度:財産管理、契約行為の支援
今後の計画
- 事前指示(アドバンス・ケア・プランニング):本人の意思を尊重
- 財産管理:成年後見、家族信託
- 終末期の希望:延命治療、看取りの場所
- 家族内での話し合い:介護分担、費用負担
認知症とともに生きる
認知症になっても、その人らしさは失われません。できることはたくさんあり、楽しみや喜びを感じることもできます。「認知症だから何もできない」ではなく、「認知症があっても、できることを一緒に見つけていく」という姿勢が大切です。