Bipolar and Related Disorders
躁病エピソードまたは軽躁病エピソードとうつ病エピソードを特徴とする気分障害について詳しく解説します。
双極性障害(従来の「躁うつ病」)とは、気分が落ち込み意欲が低下するうつ病エピソードと、気分が高揚して非常に活動的になる躁病エピソードまたは軽躁病エピソードを繰り返す気分障害です。
気分、活動性、エネルギーレベルの極端な変動が見られ、これらの変動は日常生活、対人関係、仕事や学業に著しい影響を及ぼします。
双極性障害は、うつ病エピソードだけでなく、躁病エピソードまたは軽躁病エピソードを伴うことが特徴です。気分が高揚している時は受診を考えないため、患者さんはうつ状態の時に来院することが多く、「うつ病」と誤診されることがあります。しかし、治療法や使用する薬が異なるため、慎重に診断する必要があります。
過去の躁病エピソードや軽躁病エピソードについて、本人は「これが自分の本来の状態だ」ととらえがちで、自覚がありません。周囲も「少しテンションが高いかな」「もともとの性格だろう」と受け取りがちです。正しい診断のためにも、受診の前に家族など日々接する人と過去の状態について振り返ることが重要です。
少なくとも1回の躁病エピソードを経験したことが診断基準です。通常はうつ病エピソードも経験しますが、必須ではありません。
少なくとも1回の軽躁病エピソードと1回以上のうつ病エピソードを経験したことが診断基準です。躁病エピソードは経験していません。
少なくとも2年間(子どもでは1年間)にわたって、軽躁症状とうつ症状が繰り返し現れる状態です。症状は躁病エピソード、軽躁病エピソード、うつ病エピソードの診断基準を満たすほどではありません。
躁病エピソードは、気分が異常に高揚した状態が少なくとも1週間持続し(または入院が必要なほど重度)、以下の症状のうち3つ以上(気分が易怒的な場合は4つ以上)が認められます。
躁病エピソードは、社会的または職業的機能に著しい障害をもたらし、入院が必要になることもあります。躁病エピソード中の判断力の低下により、多額の負債、人間関係の破綻、失職などの深刻な社会的損失が生じることがあります。
軽躁病エピソードは、躁病エピソードと同様の症状が少なくとも4日間持続しますが、重症度は低く、社会的・職業的機能の著しい障害はなく、入院の必要もありません。
軽躁病エピソードは、本人にとっては調子の良い状態であり、周囲も「いつもより元気だな」程度に感じることが多いです。そのため、医師に報告されず、双極Ⅱ型障害の診断が遅れることがあります。過去に「異常に調子が良かった時期」がなかったか、家族と一緒に振り返ることが重要です。
双極性障害のうつ病エピソードは、単極性うつ病(いわゆる「うつ病」)のうつ病エピソードと症状は同じです。以下の症状のうち5つ以上が2週間以上ほぼ毎日続き、そのうち少なくとも1つは①または②である必要があります。
躁病エピソードまたは軽躁病エピソードからうつ病エピソードへの移行期、またはその逆の移行期には、両方の症状が混在した状態が現れることがあります。これを混合状態(混合性の特徴を伴う)と呼びます。
混合状態は、自殺のリスクが最も高い状態の一つです。抑うつ気分がありながら、エネルギーレベルが高いため、自殺を実行に移す危険性が高まります。混合状態が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。
双極性障害の治療目標は、以下の3点です:
双極性障害は再発性の高い疾患で、うつ病エピソードや躁病エピソードが一度だけで済むことは、まずありません。治療を受けずに放置すると、症状自体が自然回復することがあっても、その間に生じた社会的損失(多額の負債、人間関係のトラブル、離婚、失職など)の回復は容易ではありません。ただし、再発は治療により予防できます。
双極性障害の治療の基本は薬物療法です。気分安定薬をメインに、抗精神病薬、必要に応じて抗うつ薬を状態に応じて使い分けます。
双極性障害の第一選択薬です。躁病エピソード、うつ病エピソードの治療と再発予防に使用されます。
躁病エピソード、特に精神病症状を伴う場合に使用されます。
双極性障害のうつ病エピソードに抗うつ薬を使用する場合は、慎重さが必要です。抗うつ薬単独での使用は、躁転(うつ状態から躁状態に急激に切り替わること)を引き起こすリスクがあります。使用する場合は、必ず気分安定薬と併用します。
双極性障害の薬物療法は、長期的な継続が必要です。以下の点に注意してください:
少し良くなったからといって、勝手に薬をやめてしまうと、再発を繰り返したり、最悪の場合は自殺につながることもあります。症状が改善しても、再発予防のために薬を飲み続ける必要があります。
薬物療法に加えて、以下の心理社会的アプローチも有効です:
双極性障害は再発することの多い疾患です。治療により改善し、症状が見られなくなっても、再発予防のために治療を続ける必要があります。
月に1〜2回、外来を受診し、処方された薬を飲み続けます。それ以外は普通に生活できます。
以下を一定に保つことが重要です:
双極性障害の方は、生活リズムの乱れが気分エピソードのきっかけになりやすいことが知られています。規則正しい生活を心がけることで、再発リスクを減らすことができます。
アルコールや違法薬物は、症状を悪化させ、薬の効果を妨げるため、避ける必要があります。
治療継続は再発予防のために重要ですが、治療中断が最も生じやすいのは軽躁状態の時です。好調で快適な日が続くため、「もう完全に治った」と思って治療が中断されがちですが、それが後のうつ病エピソードや躁病エピソードの再発につながってしまいます。好調で治ったと思っても、実はそれが軽躁状態のこともあります。自己判断で治療を中断しないことが何よりも大切です。
以下のような場合は、すぐに医療機関を受診してください:
一定の精神障害の状態にあることを認定し、各種支援を受けやすくする制度です。
継続的に医療を必要とする方の医療費負担を軽減する制度です。
一定の障害の状態にある方に支給される年金です。